高校入試制度は今大きく変わろうとしています
2009年5月、千葉県の教育委員会は2011年の県立高校の入試から「推薦入試」にあたる「特色ある入学者選抜」(2011年度からの名称は前期選抜)でも、一般入試と同様に学力検査を受験生に課すという入試改革を発表しました。この「推薦入試」に学力検査を課すという流れは全国的な流れになっています。
主な要因は子供たちの「学力低下」というのが多くの受け止め方です。「15の春を泣かせない」というキャッチフレーズのもと、受験機会をできるだけ増やし、学力検査を課さずに内申書や推薦書や自己アピール等で合否判定を行ってきた高校入試が大きく転換しようとしているのです。
学校の成績評価に絶対評価が大阪府を除く都道府県で導入されて以来、受験生を受け入れる高校側では、中学校の成績表に対する信頼が失われました。絶対評価は生徒の到達度による評価の為、評価者の主観が大きく作用し、ある中学校では5段階評価で「5」の評価を受けた生徒が80%にのぼる中学校もあれば、30%の中学校もあるという「成績のインフレ現象」を生み出したからです。そのため、5段階評価の「5」という最高の評価がついたものでもテストをやると基本が全くできていないなどの珍現象も多く見られました。各段階の評価の割合が決められていた相対評価では考えられなかったことです。
その絶対評価に加えて、学力検査のない「推薦入試」などの入試システムが行われたため、高校側は「この高校に入学するに値する学力があるのかどうかわからない」という驚くべきことが起こり始めたのが現在の高校入試で起こっていることなのです。
結局、学力検査のない「推薦入試」などによる入学者が学科によって違いますが、高校の募集定員の半分近くを占めるに至って、高校、特に公立高校の学力低下という問題が浮上してきました。
さらに少子化という構造的な問題が合わさることによって、一部の難関校を除けば、高校入試の全入化が進んだことで、国際的にも数値で明らかな「学力低下」が表れてきました。
2006年に経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に実施した国際学習到達度調査(略称PISA)で、 日本が理数系の分野でトップレベルから転落したのです。
この衝撃はかなりのもので、結局、文部科学省は、学習指導要領の改訂を早急に行うと発表し、本来は、中学校は2012年度から新しい学習指導要領の全面実施のところを2009年からできるものは前倒しして新しい学習指導要領を実施するとしたのでした。
新しい指導要領では、経済協力開発機構(OECD)が行った国際学習到達度調査(PISA)で明らかになった理数系の科目への力の傾注が顕著に見え、中学校では理数の科目の授業時間を増やすことになったのです。 中学校の数学は、2009年度からの2年間で22%(70時間)増加、理科は3年間で33%(95時間)増加することになります。増やす時間はいわゆる「ゆとり教育」で導入された「総合学習」や選択科目を削減するため、子供たちが受ける総授業時間数は今とほとんど変わらないというマジックを使ってでも文部科学省は危機感を募らせ実行してみせたわけです。
「ゆとり教育」が大きく取り上げられ、それまでの学習内容が約30%削減され、総合学習が導入されたのはほんの10年ほど前のことです。今回正式には2011年から実施(2009年度から前倒しで実施)される学習指導要領は学習内容や授業時間の増加など完全に「脱ゆとり」となったといえるでしょう。
ちなみに学習指導要領とは、教科の授業時間数や学習内容を定める小学校・中学校・高等学校の基準、いいかえればカリキュラムに該当するもので、ほぼ10年ごとに改定され、国公私立すべての学校に適用されるものです。
こうした国が決定する学校のカリキュラムの大幅変更に加え、各都道府県が高校入試に置いて、高校入試に学力検査を課す。学力検査を課す都道府県は、先に挙げた千葉県をはじめ埼玉県、和歌山県、静岡県などここ5年のうちにはほとんどの都道府県で実施されることになるでしょう。
狙いはいろいろありますが、大きな目的はもちろん「学力低下の防止」。
学習指導要領が変更されれば、高校入試の問題も変わります。つまり、高校入試制度は国・都道府県など日本全体で大きく変わっていこうとしているのです。
ここでは書きませんでしたが、キーワードとして挙げれば、「学区緩和・もしくは撤廃」「受験機会の複数化」「学校の特色化・特色・魅力のある高校作り」「独自入試問題の導入」「新たな推薦制度の導入」などなど。これらについては改めて取り上げていきたいと思っています。