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2009年7月31日付の日本経済新聞にあるアンケートの結果が出ていました。
アンケートは、日本経済新聞社がNTTレゾナント(gooリサーチ)に依頼、小中学生の子供を持つ20~60代の男女1,068人にネットで行った消費者調査です。
それによると
各県の公立高校入試事情
現在の全国の高校入試・高校受験は大きく変わろうとしています。変わるといっても実は昔の流れに戻っているだけなのですが。
「15の春は泣かせない」
と文部科学省を始め、教育委員会が張り切って取り組んだ高校入試制度は「全面的に見直し」というのがこの30年間の結論と言えそうです。
というのも、現在全国で進められている高校入試制度の改革はこの30年間押し進められてきた制度の全否定だからです。
全国の半分くらいの都道府県で導入されていた学校群制度・総合選抜制度は一部を残しほぼ全廃されました。学校群制度・総合選抜制度というのは簡単に言うと「複数の学校を一緒にして募集する」制度で、同じ学区の学校を数校単位のグループにして全体の合格枠に入った生徒の試験の成績などに応じて均等に振り分ける」制度です。
15の春を泣かせず、受験生に不合格を与えないという趣旨で行われたこの学校群制度は都道府県の公立高校を粉々に打ち砕きました。特に各都道府県の名門公立高校は軒並み例外なく跡形もなくつぶされました。その結果、私立の中高一貫校が名門公立高校に取って代わったのです。「15の春は泣かせない」は今や「12歳の春を泣かせる」結果になってしまったのでした。
その学校群制度・総合選抜制度は一部を残して全面的に廃止となり、全国で「学区撤廃」が行われています。学区撤廃は全県を学区とする制度と県をいくつかに分けて学区を指定する制度がありますが、基本的に希望すればどこの高校でも出願・受験できるようになりました。
名門公立高校の復活は道半ばでしばらく時間がかかりますが、学区の撤廃そして単独選抜が行われたことで早くも名門公立高校への受験生の集中が始まっています。通常の公立高校に課せられる問題では差がつかず、「独自問題」を導入する高校も増えています。これは英語や数学において、難度の高い問題を高校側が独自に作成し受験生に課す課題です。相当に考えさせる問題も散見され、受験生はこの独自問題への対応に迫られており、塾で対策授業が行われることもしばしばです。
さらに「15の春は泣かせない」の大号令のもと、受験機会の増大を名目に押し進められてきた「推薦入試」も今後は廃止される方向に進んでいきそうです。推薦入試には学校推薦、自己推薦などがありますが、学力検査を課さない学校が多く、結果的に上位校を除けば学力不足の生徒を受け入れる素地がありました。しかし、ゆとり教育批判、学力低下批判を受けて、推薦入試でも学力検査を行うというのが全国的な流れです。今後は受験機会を減らさずに学力検査は課すという推薦入試が行われるようになっていくでしょう。
過去30年間に行われた高校入試制度は今大きく変わろうとしています。
2010年度高校入試、新型インフルの対応にずれ
新型インフルエンザの患者数が爆発的に増えて、今冬相当数の広がりが懸念される中、高校入試の「追試実施の有無」の対応に各都道府県が追われています。
文部科学省によると、各都道府県の公立高校入試はその実施主体が各都道府県のため、統一の方針を出して実施するのが難しいとのことで、対応が各都道府県の胸三寸になっています。
もし仮に公立高校入試当日に新型インフルエンザにかかっていた場合、追試がなければ受験機会を失ってしまう。追試を実施する県は受験機会の公平さを言います。
しかし、一方で、日程的に追試を実施するのは難しいと言う自治体もあります。その場合は等しく与えられる受験機会が失われる。また、追試がない場合は、仮に新型インフルエンザにかかっていたとしても、たった1回しかない高校入試の受験期かを逃すまいと試験会場に力を振り絞って足を運ぶ。そうなると、試験会場で感染を拡大する危険もはらみます。
追試を実施しないとしている県・自治体では、例外を認めるとのちのち禍根を残すと考えるところもあるようです。
つまり、これまでも季節性インフルエンザや風邪など高校入試当日に症状があった生徒に対して追試は実施してこなかった。それが今回に限って追試というのはおかしいのではないかという考えです。追試はせずに、別室での受験で今回の事態を乗り切ろうと考えている自治体もあるようです。
こうして、各都道府県は、追試を実施すべきかどうかの検討に時間を費やしているのです。2009年11月20日現在で約15の県・自治体が公立高校入試の追試を実施すると発表しています。さらに県によっては私立高校と一体となって公立私立ともに追試を発表している県もあります。
「受験機会の公平性」
「生徒や保護者の不安の払拭」
という大義名分がある一方で、
「追試を実施した場合、本試験と問題も違うのでその得点差をどのように合否判定に結びつけるのか?」
「本試験と追試験の問題の難易度をどう克服するか?」
「追試の例外は今年のみで決着できるのか? 体調不良の生徒の次年度以降の対応は?」などなどいかなる処置を講じても課題は残りそうなこの問題。
各都道府県の今後の発表に注意しておきましょう。
2010年度全国公立高校入試で追試験を実施都道府県
受験機会の確保を名目に追試験を実施する地域、公平性の確保が難しいと追試を実施しない地域などさまざまで、最終決定を年明けの2010年1月に持ち越す県もありましたが、2010年1月29日現在で全都道府県の対応が決定しました。
一番最後まで検討していた群馬県は実施しない方針となりました。
以下、当サイト調べで2010年1月29日現在の追試験実施状況です。
高校入試制度は今大きく変わろうとしています
2009年5月、千葉県の教育委員会は2011年の県立高校の入試から「推薦入試」にあたる「特色ある入学者選抜」(2011年度からの名称は前期選抜)でも、一般入試と同様に学力検査を受験生に課すという入試改革を発表しました。この「推薦入試」に学力検査を課すという流れは全国的な流れになっています。
主な要因は子供たちの「学力低下」というのが多くの受け止め方です。「15の春を泣かせない」というキャッチフレーズのもと、受験機会をできるだけ増やし、学力検査を課さずに内申書や推薦書や自己アピール等で合否判定を行ってきた高校入試が大きく転換しようとしているのです。
学校の成績評価に絶対評価が大阪府を除く都道府県で導入されて以来、受験生を受け入れる高校側では、中学校の成績表に対する信頼が失われました。絶対評価は生徒の到達度による評価の為、評価者の主観が大きく作用し、ある中学校では5段階評価で「5」の評価を受けた生徒が80%にのぼる中学校もあれば、30%の中学校もあるという「成績のインフレ現象」を生み出したからです。そのため、5段階評価の「5」という最高の評価がついたものでもテストをやると基本が全くできていないなどの珍現象も多く見られました。各段階の評価の割合が決められていた相対評価では考えられなかったことです。
その絶対評価に加えて、学力検査のない「推薦入試」などの入試システムが行われたため、高校側は「この高校に入学するに値する学力があるのかどうかわからない」という驚くべきことが起こり始めたのが現在の高校入試で起こっていることなのです。
結局、学力検査のない「推薦入試」などによる入学者が学科によって違いますが、高校の募集定員の半分近くを占めるに至って、高校、特に公立高校の学力低下という問題が浮上してきました。
さらに少子化という構造的な問題が合わさることによって、一部の難関校を除けば、高校入試の全入化が進んだことで、国際的にも数値で明らかな「学力低下」が表れてきました。
2006年に経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に実施した国際学習到達度調査(略称PISA)で、 日本が理数系の分野でトップレベルから転落したのです。
この衝撃はかなりのもので、結局、文部科学省は、学習指導要領の改訂を早急に行うと発表し、本来は、中学校は2012年度から新しい学習指導要領の全面実施のところを2009年からできるものは前倒しして新しい学習指導要領を実施するとしたのでした。
新しい指導要領では、経済協力開発機構(OECD)が行った国際学習到達度調査(PISA)で明らかになった理数系の科目への力の傾注が顕著に見え、中学校では理数の科目の授業時間を増やすことになったのです。 中学校の数学は、2009年度からの2年間で22%(70時間)増加、理科は3年間で33%(95時間)増加することになります。増やす時間はいわゆる「ゆとり教育」で導入された「総合学習」や選択科目を削減するため、子供たちが受ける総授業時間数は今とほとんど変わらないというマジックを使ってでも文部科学省は危機感を募らせ実行してみせたわけです。
「ゆとり教育」が大きく取り上げられ、それまでの学習内容が約30%削減され、総合学習が導入されたのはほんの10年ほど前のことです。今回正式には2011年から実施(2009年度から前倒しで実施)される学習指導要領は学習内容や授業時間の増加など完全に「脱ゆとり」となったといえるでしょう。
ちなみに学習指導要領とは、教科の授業時間数や学習内容を定める小学校・中学校・高等学校の基準、いいかえればカリキュラムに該当するもので、ほぼ10年ごとに改定され、国公私立すべての学校に適用されるものです。
こうした国が決定する学校のカリキュラムの大幅変更に加え、各都道府県が高校入試に置いて、高校入試に学力検査を課す。学力検査を課す都道府県は、先に挙げた千葉県をはじめ埼玉県、和歌山県、静岡県などここ5年のうちにはほとんどの都道府県で実施されることになるでしょう。
狙いはいろいろありますが、大きな目的はもちろん「学力低下の防止」。
学習指導要領が変更されれば、高校入試の問題も変わります。つまり、高校入試制度は国・都道府県など日本全体で大きく変わっていこうとしているのです。
ここでは書きませんでしたが、キーワードとして挙げれば、「学区緩和・もしくは撤廃」「受験機会の複数化」「学校の特色化・特色・魅力のある高校作り」「独自入試問題の導入」「新たな推薦制度の導入」などなど。これらについては改めて取り上げていきたいと思っています。
全受験生に学力検査を課す都道府県
公立高校入試で、すべての受験生に学力検査を課す都道府県が増えています。これまでに学力検査を導入した県、これから導入する予定の県は以下の通りです。
2007年度 和歌山県
2008年度 静岡県
2010年度 青森県・埼玉県・高知県
2011年度 千葉県・徳島県
2013年度 宮城県
すでに和歌山県や静岡県では学力検査を課す入試が実施されており、2010年入試からは埼玉県が実施、2011年度からは千葉県が、予定で2013年度からは宮城県がすべての受験生に学力検査を課す高校入試を実施する予定です。
こうした高校入試で学力検査を課す背景には、受験生の学力低下が原因といわれています。少子化による全入世代の今の受験生は特別な勉強をしなくても高校進学できる世代となりました。
その上で、多様化の時代に即した多様な受験機会の確保が推薦入試や一芸入試、書類審査のみの受験などが頻繁に行われるようになりました。
通常、こうした推薦入試系の入試は1月の後半から2月の前半に実施されることが多く、ここで合格する生徒が多い県では3割から4割近くを占めるようになった県もあります。
その結果、中学3年生の中に受験が終わった組とこれから受験組の2つのグループを中学校内に抱えることになりました。
当然ながら、受験が終わった組は合格後の勉強に身が入らず、これから入試組に迷惑をかけました。なおかつ2月の前半で高校の合格が決まったために高校入学までの数ヶ月間まったく勉強しないで進学する子供も出てきました。
結果として、高校側から推薦入試組の中には「学力がないものが多い」とか「もっとしっかり勉強をさせて高校に入学させて欲しい」などの要望が多く出されるようになりました。
加えて、世界各国との比較で出てきた日本の学生の学力低下の問題が合わさり、ついに教育委員会もこれらの声に応えるべく、学力検査を課すかつての高校入試の形式を現代に蘇らせつつあるところです。
この傾向は2020年度までには全国に行き渡り、全国で学力検査を課す高校入試が実施されることになるでしょう。
高校改革で新設される学校・学科
高校への進学率が97%を越え、ほとんど義務教育並みの進学率が達成された昨今、子供たちの進む進路というのは多種多様なものになっています。豊かになれば、当然今度はあらゆる面で多様性が志向されるのは当然ですが、では高校教育における多様性とはいかなるものか? 以下、文部科学省、すなわち国が考える高校改革の主に制度面についてみてみましょう。
保護者の側からいえば、高校には端的に「子供の学力向上」を望んでいるだけなのではないかと思いますが、国は子供たちにいろいろな選択肢を高校が与えるべきだと考えているようです。
子供たちの能力、適性、興味、関心が高校進学に際して活かせる制度として文部科学省が考えているのは、すでに見てきた高校入試制度を除けば、主に
「総合学科の新設」
「単位制高等学校の新設」
「中高一貫教育制度の推進」
などが挙げられます。
1つ1つ順番にみていきましょう。
「総合学科」とは、高校のいわゆる学科である「普通科」、「専門学科」に並ぶものとして、平成6年度から導入された新しい学科です。すでに平成19年度には全国322校、平成20年度4月現在で334校で設置されました。
総合学科で行われる教育の特色は、
◆幅広い選択科目の中から生徒が自分で科目を選択し学ぶことが可能であり、生徒の個性を生かした主体的な学習を重視すること
◆将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視すること
子供が主体的に自らの進路を考え、勉強する科目も子供自身が選択していく総合学科。大学進学率が高くなり、一部の専門学科の人気がなくなりつつある今、それに代わる学科が総合学科といえます。今後は総合学科の中でも、大学進学を主とする総合学科と専門性を深めていく総合学科の大きく2つに特色がわかれていくと予想されます。
「単位制高校」とは、学年による教育課程の区分を設けず、決められた単位を修得すれば卒業が認められる高校です。単位制高校というと、古い年代の方は、「定時制」もしくは「通信制」の高校課程を思い浮かべる人も多いと思います。実はこの単位制高校は昭和63年に定時制と通信制の高校に導入された制度で、平成5年度から全日制課程においても設置が行われるようになりました。ある意味では大学と同じような制度と考えるとわかりやすいでしょう。
単位制高校は、すでに平成19年度の807校あり、平成20年4月現在ではさらに50校増えて857校となっており、総合学科をはるかに上回る設置数となっています。
単位制高校の特色は、
◆自分の学習計画に基づいて、自分の興味、関心等に応じた科目を選択し学習できること
◆学年の区分がなく、自分のペースで学習に取り組むことができること
などが挙げられます。
総合学科も単位制高校も、特色を見てもらうと、最初に書いた子供たちの能力、適性、興味、関心を活かし、高校進学後は子供たちの主体性に任せる方針が明確になっているといえます。
また、これらとは別に「公立の中高一貫教育」の設置も進んでいます。中高一貫教育は、平成11年4月から実施された制度で、平成19年度は280校の設置でしたが、平成20年4月現在では54校増えて、334校設置されています。
人気の中高一貫校は競争倍率が10倍を超えるなど競争の過熱が懸念されていますが、一方で閉校に追い込まれる中高一貫校もあり、地域・自治体の設置のコンセプトによってその盛衰が明確になってきています。
公立の中高一貫教育には、3つの実施形態があり、それぞれ自治体が形態を決定しています。
3つの実施形態とは、
1、中等教育学校
一つの学校において一体的に中高一貫教育を行うもの
2、併設型の中学校・高等学校
高等学校入学者選抜を行わずに、同一の設置者による中学校と高等学校を接続するもの
3、連携型の中学校・高等学校
既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校が,教育課程の編成や教員・生徒間交流等の面で連携を深める形で中高一貫教育を実施するもの
1の中等教育学校の競走倍率が非常に高くなる傾向が見られ、地域のトップ校に併設された2の併設型の中学校・高等学校も地域によっては競争倍率が高くなる傾向があるようです。
3の連携型の中学校・高等学校については、その連携の成否が鍵で場合によっては形だけの連携校になっているところもあるようです。
保護者の7割が公表賛成 全国学力テストの学校別結果の公表の是非
文部科学省が全国の小中学校で実施している「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の学校別の結果について、「平成20年度 教育委員会アンケート・保護者アンケート」が2009年6月5日、政府の規制改革会議で公表されました。
調査結果によると
全国学力・学習状況調査の学校毎の結果公表については、教育委員会は反対であるのに対し、保護者は賛成が多いという結果が出て、その認識の違いが明確になりました。
全国学力・学習状況調査の結果を学校毎に公表することについてのアンケート結果<
学校毎の結果を公表すべき
市区教育委員会 3.1%
都道府県・政令指定都市教育委員会 1.6%
保護者アンケート 67.3%
学校毎の結果を公表すべきではない
市区教育委員会 86.7%
都道府県・政令指定都市教育委員会 65.1%
保護者アンケート 10.5%
◆教育委員会が学校毎の結果を公表すべきではないと考える主な理由
「学校間の序列化や過度な競争に繋がるから」【市区90.9%、都道府県・政令指定都市90.2%】
「指導方法の改善に役立てるためで、公表しなくてもできるから」【市区74.2%、都道府県・政令指定都市46.3%】
◆保護者が学校毎の結果を公表すべきだと考える主な理由
「学力を向上させるのは、まずは学校(教員)の責務だから」【56.8%】
「学校毎の結果は学校選択のための基本情報のひとつだから」【55.1%】
「説明責任を果たすために公表するのは当然だから」【36.9%】
見ていただいたらわかるとおり、明らかに正反対の結果となっています。文部科学省も「公開による弊害」を主張しており、この議論は今しばらく続きそうです。
あなたは賛成ですか? それとも反対ですか?
平成5年に考えられていた高校入試制度の改革
文部科学省が出した高校入試に関する【通知】というものがあります。それを見ていくと、学習指導要領の一挙30%削減の「ゆとり教育」、そして学力低下の指摘による過去の学習指導要領に揺り戻された理数系強化の新しい学習指導要領の大きな流れがわかります。
また、読んでいくと、つまり高校入試改革というのは、文部科学省が意図した方向を示し、それを高校側が実行しているだけだということもよくわかります。
以下、平成5年2月22日付で文部事務次官の坂元弘直氏の名前で出された文初高第243号【高等学校の入学者選抜について(通知)】という通達を見ていきましょう。この16年ほど前の通達が現在の高校入試制度の骨格をなしていることがわかるはずです。
通知の大きな項目だけをざっと抜き出してみますと、「1 公立高等学校の入学者選抜の改善について」の項では、
(1)多様な選抜方法の実施について
(2)多段階の入学者選抜の実施について
(3)入学者選抜の資料について
(4)学力検査の在り方について
などの7項目が挙げられています。
少し見ていきましょう。いずれも「 」でくくった部分が文部科学省の通知の部分です。
(1)多様な選抜方法の実施についてでは、「各学校・学科・コースごとの特色に応じて多様であることが望ましい」とし、「例えば,各学校・学科等ごとに,あるいは定員の一部ごとに,学力検査の実施教科や教科ごとの配点を変えたり,調査書と学力検査の成績の比重の置き方を変えたり,調査書の中の重視する部分を変えたりすることなどが考えられる」としています。
現在は入試前には調査書と学力検査の比率を各高校ごとに公表したり、高校によって、それぞれ選抜方法が少しずつ違うわけですが、それはこの通達によってもたらされたわけです。
(2)多段階の入学者選抜の実施についてでは、
「 ア 受験機会の複数化及び推薦入学の活用などにより,多段階にわたり入学者選抜が実施されるよう十分配慮すること」、
「イ 推薦入学については,専門学科のみでなく,普通科においても教育上の特色づくりと並行して一層活用されるよう配慮すること」
とあります。
専門学科のみならず、普通科でも大いに推薦入試を奨励し、受験機会を増やせと。これによって高校入試はほとんどの生徒にとって「一発勝負」だったものから複数の受験機会のあるものに変わったわけですが、子供たちの多くは学力検査なしでの受験を好み、推薦入試に殺到しました。殺到して競争倍率が上がり、まっとうな競争が行われている間は良かったのですが、受験生の趣向が「挑戦」から「入れる学校」に変化したことで、早い時期に高校入試を終えてしまうために推薦入試を活用する風潮も強まってきたのです。これは公立高校の話ですが、これに私立高校の早い時期の推薦入試が重なると、中学校のあるクラスでは半数以上が推薦入試で事実上の高校入試を終えてしまう場合などもあり、2月末から3月末までに実施される高校の一般入試前には中学校の授業が成り立たない事例も多く見られます。
ゆえに文部科学省ではこの通達でも、「3 留意すべき事項について」と題して、「(2)高等学校入学者選抜は,あまり早い時期に行われないようにするとともに,中学校の教育活動の成果を十分評価することができる資料及び時期により行われることについて特に配慮すること」と記しています。
しかし、入試シーズンにおける最初の合格発表から最後の合格発表までは約1ヶ月の間隔があり、受験機会の増大による負の面がここに出てきたといえるでしょう。また、私立高校も少子化の影響などで定員割れの恐れを持っており、できる限り早い段階での生徒の確保は経営上の大命題がゆえに、少しでも早く入試を行って早めに生徒を確保したいという衝動は依然強く、このバランスを取るのは難しく、中学校3年生の1月から始まる学校生活は事実上崩壊しています。
次に平成5年の文部科学省の通知では「(3)入学者選抜の資料について」と題して、「ア 合否の判定の際の調査書と学力検査の成績の比重の置き方については,生徒の選択の幅の拡大等のため,各学校・学科等,あるいは定員の一部ごとに異なる方式で合否の判定を行うことについての工夫がなされるよう配慮すること」と記され、多様な受験機会同様、多様な合否判定を行うことを文部科学省は求めています。
また、ここが今一番問題になっているところですが、「さらに,生徒の個性に応じ選抜方法を多様化させるという観点から,各学校・学科等ごとに,あるいは定員の一部ごとに,学力検査を実施しない選抜,調査書の比重を大幅に軽減する選抜や調査書を用いない選抜などを行うことも考えられること」とあります。
文部科学省の「行うことも考えられる」は、すなわち「やりなさい」と同義語のお役人言葉です。言いかえれば、生徒の個性に応じ選抜方法を多様化させるという観点から,
「学力検査を実施しない選抜」
「調査書の比重を大幅に軽減する選抜」
「調査書を用いない選抜」
などいろいろとやりなさいということです。
現在各都道府県が進めている改革というのは学力低下を防ぐため、また中学校の授業というものを3年間最後まで全うにするために「推薦入試でも学力検査を課す」というのが大きな流れですから、平成5年のこの通達は隔世の感があります。
一方、「(4)学力検査の在り方について」では、現在も大きな課題となっている点をすでにこの時から指摘しています。すなわち「 ア 学力検査の問題作成については,・・・・知識の量や程度を問う出題に偏ることなく,例えば論述式の解答を求める出題や思考力・分析力を問う出題を増やすなど,中学校の新しい教育課程で重視されるべき能力が適切に反映されるよう一層の工夫改善を図ること」とし、「学力検査の成績を主たる資料としつつ,面接や小論文・実技検査などを組み合わせて行うこと」が良いのではないかと示唆しています。結局、推薦入試では学力検査は行われず、調査書と「面接や小論文・実技検査」などによって行われるようになったのです。
この通達は、そのあとの「3 業者テストの偏差値を用いない入学者選抜の改善について」の項と大いに関係があります。
文部科学省では当時「(1)高等学校の入学者選抜は公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行われるべきものであり,業者テストの結果を資料として用いた入学者の選抜が行われることがあってはならない」とし、「業者テストによる偏差値等に依存した進路指導は行わないこと」と厳しく言い渡しています。また、高校側には「(2)入学者選抜に関し一切,中学校にあっては,業者テストの結果を高等学校に提供しないよう,また,高等学校にあっては,業者テストや学習塾の実施するテストの偏差値の提供を中学校に求めないよう,平成6年度入学者選抜から直ちに改善すること」とし、偏差値等の数値による進路指導がこのとき文部科学省によって厳しく戒められました。
この考え方に共感される方は多いと思います。しかし、それによって現場、つまり中学校の進路指導の負担は大きくなってしまったのです。確かに理想的には中学校における進路指導は偏差値に頼って行われるのではなく、「日ごろの学習成績や活動の状況等による生徒の能力・適性,興味・関心等に基づき総合的に行われるべきもの」なのでしょう。
しかし、送り出す中学校も受け入れる高校も絶対評価という当てにならない通知表、学力検査を伴わない推薦入試、教師の主に主観で書かれる内申書、主体性のない生徒などなどなんらものさしになる材料や制度がないまま、このような通達が行われたため、現場の教師の投げやり感は次第に高まっていったのでした。これまで大きな問題にならなかったのは少子化による高校入試のほぼ全入時代を迎えつつこと、子供たちの「入れるところにできるだけ早く」という安易な気持ちがあったからともいえるでしょう。
文部科学省は「・・・・業者テストの偏差値等に依存して,中学校において生徒の適性や希望などを無視して生徒が志望する高等学校を受験させないよう指導したりすることがないよう,直ちに改善すること」と指示し、これによって中学校では一切の業者テストは行われなくなったのです。中学校は進路指導の大きな柱である偏差値を失ったのです。それによって偏差値による進路指導がなくなったわけではありません。中学校が行わなくなったテストは子供たちが通う塾が代わりに請け負うようになったのです。
志望校に迷った場合、保護者は中学校には行かずに、塾に行って「合格するでしょうか?」と聞き始めたのです。平成の塾の隆盛はこの通達によるところが大きいといえるのかもしれません。
結局、現在では中学校で業者テストが実施され、そのテスト結果に基づいて志望校の進路志望が行われています。また、平成19年からは、国が「全国学力・学習状況調査」と銘打って日本全国の小中学生全員を対象としたテストも実施されるようになったのでした。
学力低下、それは国挙げて求めた制度によってもたらされたもの。そういうのは言い過ぎでしょうか?
今回紹介した通達はさらに平成9年の通達につながっていくのですが、それは改めて紹介することにしましょう。
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