各県の公立高校入試事情
現在の全国の高校入試・高校受験は大きく変わろうとしています。変わるといっても実は昔の流れに戻っているだけなのですが。
「15の春は泣かせない」
と文部科学省を始め、教育委員会が張り切って取り組んだ高校入試制度は「全面的に見直し」というのがこの30年間の結論と言えそうです。
というのも、現在全国で進められている高校入試制度の改革はこの30年間押し進められてきた制度の全否定だからです。
全国の半分くらいの都道府県で導入されていた学校群制度・総合選抜制度は一部を残しほぼ全廃されました。学校群制度・総合選抜制度というのは簡単に言うと「複数の学校を一緒にして募集する」制度で、同じ学区の学校を数校単位のグループにして全体の合格枠に入った生徒の試験の成績などに応じて均等に振り分ける」制度です。
15の春を泣かせず、受験生に不合格を与えないという趣旨で行われたこの学校群制度は都道府県の公立高校を粉々に打ち砕きました。特に各都道府県の名門公立高校は軒並み例外なく跡形もなくつぶされました。その結果、私立の中高一貫校が名門公立高校に取って代わったのです。「15の春は泣かせない」は今や「12歳の春を泣かせる」結果になってしまったのでした。
その学校群制度・総合選抜制度は一部を残して全面的に廃止となり、全国で「学区撤廃」が行われています。学区撤廃は全県を学区とする制度と県をいくつかに分けて学区を指定する制度がありますが、基本的に希望すればどこの高校でも出願・受験できるようになりました。
名門公立高校の復活は道半ばでしばらく時間がかかりますが、学区の撤廃そして単独選抜が行われたことで早くも名門公立高校への受験生の集中が始まっています。通常の公立高校に課せられる問題では差がつかず、「独自問題」を導入する高校も増えています。これは英語や数学において、難度の高い問題を高校側が独自に作成し受験生に課す課題です。相当に考えさせる問題も散見され、受験生はこの独自問題への対応に迫られており、塾で対策授業が行われることもしばしばです。
さらに「15の春は泣かせない」の大号令のもと、受験機会の増大を名目に押し進められてきた「推薦入試」も今後は廃止される方向に進んでいきそうです。推薦入試には学校推薦、自己推薦などがありますが、学力検査を課さない学校が多く、結果的に上位校を除けば学力不足の生徒を受け入れる素地がありました。しかし、ゆとり教育批判、学力低下批判を受けて、推薦入試でも学力検査を行うというのが全国的な流れです。今後は受験機会を減らさずに学力検査は課すという推薦入試が行われるようになっていくでしょう。
過去30年間に行われた高校入試制度は今大きく変わろうとしています。
北海道 [ 北海道 ]
東北 [ 青森 | 岩手 | 宮城 | 秋田 | 山形 | 福島 ]
関東 [ 東京 | 神奈川 | 埼玉 | 千葉 | 茨城 | 栃木 | 群馬 | 山梨 ]
近畿 [ 大阪 | 兵庫 | 京都 | 滋賀 | 奈良 | 和歌山 ]
九州 [ 福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 ]
沖縄 [ 沖縄 ]
高校入試制度は今大きく変わろうとしています
2009年5月、千葉県の教育委員会は2011年の県立高校の入試から「推薦入試」にあたる「特色ある入学者選抜」(2011年度からの名称は前期選抜)でも、一般入試と同様に学力検査を受験生に課すという入試改革を発表しました。この「推薦入試」に学力検査を課すという流れは全国的な流れになっています。
主な要因は子供たちの「学力低下」というのが多くの受け止め方です。「15の春を泣かせない」というキャッチフレーズのもと、受験機会をできるだけ増やし、学力検査を課さずに内申書や推薦書や自己アピール等で合否判定を行ってきた高校入試が大きく転換しようとしているのです。
学校の成績評価に絶対評価が大阪府を除く都道府県で導入されて以来、受験生を受け入れる高校側では、中学校の成績表に対する信頼が失われました。絶対評価は生徒の到達度による評価の為、評価者の主観が大きく作用し、ある中学校では5段階評価で「5」の評価を受けた生徒が80%にのぼる中学校もあれば、30%の中学校もあるという「成績のインフレ現象」を生み出したからです。そのため、5段階評価の「5」という最高の評価がついたものでもテストをやると基本が全くできていないなどの珍現象も多く見られました。各段階の評価の割合が決められていた相対評価では考えられなかったことです。
その絶対評価に加えて、学力検査のない「推薦入試」などの入試システムが行われたため、高校側は「この高校に入学するに値する学力があるのかどうかわからない」という驚くべきことが起こり始めたのが現在の高校入試で起こっていることなのです。
結局、学力検査のない「推薦入試」などによる入学者が学科によって違いますが、高校の募集定員の半分近くを占めるに至って、高校、特に公立高校の学力低下という問題が浮上してきました。
さらに少子化という構造的な問題が合わさることによって、一部の難関校を除けば、高校入試の全入化が進んだことで、国際的にも数値で明らかな「学力低下」が表れてきました。
2006年に経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に実施した国際学習到達度調査(略称PISA)で、 日本が理数系の分野でトップレベルから転落したのです。
この衝撃はかなりのもので、結局、文部科学省は、学習指導要領の改訂を早急に行うと発表し、本来は、中学校は2012年度から新しい学習指導要領の全面実施のところを2009年からできるものは前倒しして新しい学習指導要領を実施するとしたのでした。
新しい指導要領では、経済協力開発機構(OECD)が行った国際学習到達度調査(PISA)で明らかになった理数系の科目への力の傾注が顕著に見え、中学校では理数の科目の授業時間を増やすことになったのです。 中学校の数学は、2009年度からの2年間で22%(70時間)増加、理科は3年間で33%(95時間)増加することになります。増やす時間はいわゆる「ゆとり教育」で導入された「総合学習」や選択科目を削減するため、子供たちが受ける総授業時間数は今とほとんど変わらないというマジックを使ってでも文部科学省は危機感を募らせ実行してみせたわけです。
「ゆとり教育」が大きく取り上げられ、それまでの学習内容が約30%削減され、総合学習が導入されたのはほんの10年ほど前のことです。今回正式には2011年から実施(2009年度から前倒しで実施)される学習指導要領は学習内容や授業時間の増加など完全に「脱ゆとり」となったといえるでしょう。
ちなみに学習指導要領とは、教科の授業時間数や学習内容を定める小学校・中学校・高等学校の基準、いいかえればカリキュラムに該当するもので、ほぼ10年ごとに改定され、国公私立すべての学校に適用されるものです。
こうした国が決定する学校のカリキュラムの大幅変更に加え、各都道府県が高校入試に置いて、高校入試に学力検査を課す。学力検査を課す都道府県は、先に挙げた千葉県をはじめ埼玉県、和歌山県、静岡県などここ5年のうちにはほとんどの都道府県で実施されることになるでしょう。
狙いはいろいろありますが、大きな目的はもちろん「学力低下の防止」。
学習指導要領が変更されれば、高校入試の問題も変わります。つまり、高校入試制度は国・都道府県など日本全体で大きく変わっていこうとしているのです。
ここでは書きませんでしたが、キーワードとして挙げれば、「学区緩和・もしくは撤廃」「受験機会の複数化」「学校の特色化・特色・魅力のある高校作り」「独自入試問題の導入」「新たな推薦制度の導入」などなど。これらについては改めて取り上げていきたいと思っています。
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